遺産相続で不動産を相続した場合、登記簿謄本の所有者事項を変更するには手続きが必要になります。
しかしこの所有者変更登記は義務でないため、最近では不動産の現在の所有者はわからなくなる事態が増えてきました。
このことから政府は2024年迄に相続の名義変更を義務化することに決定しました。
この記事では、相続登記の義務化になった背景や義務化される項目、相続したくない場合はどうするのかをご紹介します。
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今までは所有権の移転があった際の、所有者変更登記は任意とされてきました。
相続登記の義務化への背景は、相続登記をしないで長年放置される不動産が増加したのが問題となったためです。
普段歩いていて、空き家や放置された土地を見ていませんか。
ここは立地が良いのに放置されているのは、勿体ないと考えたことはないでしょうか。
国が調査した結果、相続登記をきちんとおこなう方は80%になり、残り20%は相続登記がされない「所有者不明土地」です。
相続をしない問題は、空き家の増加や何世帯に渡る相続の発生などによる権利関係の複雑化、災害復興の工事が進められなく遅れてしまう原因、公共用地として買収ができないなどさまざまな社会問題が起きています。
所有者不明な土地があることで、経済的損失額は約6兆円にもなるという試算がでています。
この問題の解決に向け、2021年4月に「相続登記の義務化」の改正法案が可決されました。
可決されたことによって、2024年を目途に施行をおこなうことになっています。
所有者不明の土地
所有者不明の土地は、全国で合わせると410haを上回っております。
これは日本全国所有者不明の土地を合わせると、九州(約367ha)を越えてしまう、ということになります。
このままでは高齢化が加速している日本では、2040年頃には所有者不明の土地が720万haを越えると予測されています。
これは、北海道の土地面積は約780万haに匹敵する広さです。
現在も膨大な土地が、有効活用せれずに眠っている状態なのです。
メガ共有地問題
メガ共有地問題とは、不動産の相続人が多人数になった土地のことです。
相続が発生した際に相続登記をしないで放置し、その後相続人の方が亡くなり、子どもが相続登記をしないといった2世代から3世代へ、次に4世代とうつりかわるうちに数十人の相続人になりメガ共有地になります。
管理する方が不在になり、近隣の方の権利を侵害していたり、火事や防犯、衛生上の問題になったり、樹木が隣地や公道にはみ出して進行の妨げになっています。
また放置された土地を含めた、地域での開発計画や鉄道敷設、災害予防の施設建設など、所有者すべての同意が必要です。
しかし共有者の中に不明者がいると、意思決定ができない問題が発生するでしょう。
相続登記の義務化される項目や罰則内容
相続登記が義務化される項目と罰則内容をご紹介します。
義務化される項目と罰則内容は、正当な理由なく期限内に申請しなかった場合です。
過料の判断は、不動産の取得が明らかなのに期間内に申請を怠るなどした際、悪質なケースと想定されてしまい、過料が発生します。
各義務化される項目と罰則内容は下記になります。
相続登記の申請義務化と罰則内容
所有権を取得した日から3年以内に相続の登記が必要です。
また遺産分割により、所有権を取得した場合は分割の日から3年以内に相続登記をしなければいけません。
たとえば、遺産分割協議が3年後にまとまった場合は、その日から3年以内の相続登記の手続きが必要です。
罰則内容は、もし正当な理由がなく相続登記を期限内にしなければ、10万円以下の過料が発生します。
相続人申告登記の創設
この項目は新たに創設され、内容は申請義務のある方が相続の始まったこと、自身が相続人であることを申し出ることで義務を履行したと認められます。
これは遺産分割協議が終わっていないときに、先に申請しておきたいケースに利用することになるでしょう。
罰則内容は、もし正当な理由がなく申請しない場合、5万円以下の過料を支払わなければなりません。
施行は3年後の予定です。
登記名義人の氏名または名称や住所変更の登記の義務付け
不動産の所有者が氏名や住所に変更があった場合、2年以内に登記を変更しなければいけません。
所有者が転居を繰り返すことで所在が分からなくなることを防ぐためです。
この義務は5年以内の施行予定になります。
法務局による所有者情報取得の仕組み
不動産の登記をした際に、生年月日などの情報が法務局へ提供される仕組みです。
住民基本台帳ネットワークシステムから、法務局は登記簿上の所有者の死亡が確認できます。
相続登記のための必要書類
相続登記をおこなうには、相続を証明するために公的書類が必要です。
役所の書類の保存期限は、戸籍の除籍は150年、住民票の除籍は5年、除籍の附票は5年、改製原戸籍の附票は5年と決まっています。
期間が経過するほど書類が取得できないリスクが高まります。
最悪の場合では、「自身の不動産なのに名義変更ができない」という事態に陥る可能性がありますので、早めの行動を心掛けてください。
相続したくない土地はどうすれば良いのか
遺産を相続するにはすべてものが対象となり、相続したくない土地でも対象です。
改正により、不要な土地だけの相続放棄が認められます。
もし相続された土地が、自身も使う予定がなく売却や賃貸にしても買い手や借り手が難しく、相続したくない場合は、土地所有権放棄制度以外で相続放棄、事業による引き取りが利用できます。
相続放棄は、相続開始から3か月以内に印紙などで3,000円ほどかかります。
事業所による引き取りはいつでも可能で、引き取り料金が10万円〜かかってくるでしょう。
また所有権を放棄して国庫に帰属することも可能です。
国庫に帰属させるための必要手続き
相続した土地を法務局に申請をおこない、承認を得た土地は国庫に帰属します。
今までの制度では、土地だけの相続を放棄することはできませんでした。
土地は所有しているだけで固定資産税が発生し、土地を所有し続ける負担が大きい方や、使用する予定がなく売却もできない土地を国有地にすることが可能です。
国庫にするためには以下に該当しなければいけません。
●土地の上に建物がないこと
●担保権または使用や収益を目的とする権利が設定されていない土地
●通路やほかの方による使用が予定されている土地として政令で定められていない土地
●鉛やヒ素などによる特定有害により汚染されていない土地
●境界が明らかでほかの所有者から了承を得ており境界において争いがない土地
など、国庫へ帰属するためにはすべての要件をクリアしなければいけません。
さらに負担金として10年分の管理費の支払いが必要です。
土地の上に建物がある場合は、建物を解体してから国庫への手続きになります。
境界が明らかではないのであれば、測量士に依頼をおこないましょう。
条件によって適した対応をおこなってください。
この制度は2023年に実施予定です。
まとめ
不動産の相続登記が義務化されるのは、社会問題を解決するための糸口です。
定められた期間内に、相続登記をおこないましょう。
もし相続したくない土地であれば、国庫への帰属も考えてみてください。
氏名や転居などによる所有者情報の変更を忘れない様にしましょう。
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