相続した遺産の分割方法には「換価分割」「現物分割」「代償分割」の3種類があります。
この記事では、財産を売却して現金で分割する「換価分割」について解説します。
換価分割の際に発生する譲渡所得税やその他の税金についても解説しますので、相続の予定がある方はぜひ参考にご覧ください。
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換価分割とは、相続した遺産を売却して現金に換えたあと、相続人(相続を受ける方)全員で分け合う遺産の分割方法です。
不動産は物理的に分けることができません。
そこで不動産を売却して現金に換えれば、相続人同士で平等に遺産の分配ができます。
一方で、そもそも売却できない可能性があるという点に注意が必要です。
相続した不動産を売却する場合、相続人全員の合意を得なければなりません。
なかには被相続人が住んでいた自宅を手放したくないという方もいらっしゃるでしょう。
誰か1人でも売却に反対していると、換価分割はできません。
また、被相続人(亡くなった方)と同居していた相続人がいるケースでは、新居を探す手間もかかってしまいます。
換価分割が選択されるケース
換価分割を選択したほうが良いケースは以下のとおりです。
●相続財産のなかに誰も相続したがらない現物資産がある
●相続税を納税するための資金が足りない
●相続人の間で公平に遺産相続したい
遺産のなかで誰も取得したがらない不動産があれば、売却して現金にすることで相続人それぞれが好きなように資金を利用できます。
また、相続税を納税するための資金が足りない場合にも換価分割がおすすめです。
通常、相続税は「被相続人が死亡したことを知った日から10か月以内」に申告して納税しなければなりません。
十分な預貯金がないケースでは、換価分割によって得たお金で相続税を納めるという方法もあります。
換価分割と譲渡所得税について
換価分割をおこなうと、譲渡所得税がかかる可能性があります。
譲渡所得税とは、不動産の売却によって譲渡益(儲け)が出た場合にかかる税金のことです。
譲渡所得税は、物件の所有期間や相続人が誰なのかによって変動します。
まずは譲渡益が出るかどうかを「売価-(取得費+譲渡費用)」を利用して算出してみましょう。
取得費とは不動産を購入する際にかかった費用のことを指し、譲渡費用は不動産を売却するときにかかった費用のことです。
相続財産の不動産を5,000万円で売却し、長男と長女で換価分割をおこなうとします。
取得費と譲渡費用の合計は3,000万円だったとしましょう。
計算式は「5,000万円-3,000万円=2,000万円」となり、2人で折半して1,000万円ずつの譲渡益を受けたことになります。
なお、一定の条件を満たす場合には「3,000万円の特別控除」が受けられ、この控除を利用すれば譲渡益から3,000万円の控除が可能です。
今回のケースで考えると「1,000万円(譲渡益)ー3,000万円(特別控除)」となり、譲渡所得税は発生しません。
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。
●長期譲渡所得(不動産の所有期間が5年越え):税率 20.315%
●短期譲渡所得(不動産の所有期間が5年未満):税率 39.63%
換価分割で相続する際に譲渡所得税が高額になるケースがある?
先述したように、換価分割をおこない譲渡益が発生したら、そこには譲渡所得税がかかります。
ここでの注意点は、譲渡所得税が高額になるケースがあるということです。
ここでは、どのような場合に譲渡所得税が高額なるのかを解説します。
特例や控除が使えない
「3,000万円の特別控除」とは、自宅として使われていた不動産を売却したときに、譲渡益から最高3,000万円まで控除ができるという特例です。
この特例を利用するには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
なかでも注意したいのが「持ち主が自宅として使っている場合に限りこの特例が使える」ということです。
たとえば、同居していた父が亡くなったあと自宅を相続した場合、相続後も子どもの自宅となるので特例が適用されます。
一方で、父と子どもは別に暮らしており、父が亡くなったあと自宅が空き家となるケースでは、相続した子どもの「自宅」ではないため特例が使えません。
この場合、平成28年に導入された「相続空き家の3,000万円控除」という特例を利用できる可能性がありますが、適用要件が厳しくあまり利用されていないのが現状です。
特例や控除を利用する際は、あらかじめ国税庁のホームページで要件を確認するようにしましょう。
地価上昇と貨幣価値の変動の影響
被相続人が不動産を購入してから相続人が売却するまでには、何十年とかかるケースがほとんどでしょう。
不動産の購入から売却までに長い時間が経っている場合、地価上昇と貨幣価値の変動の影響を受け、譲渡所得税が高額になる可能性があります。
たとえば、被相続人が1,000万円で購入した土地が、相続人が売却するときには8,000万円に上昇していることもあるのです。
このような不動産は、土地の購入後に再開発された地域などで多く見られます。
不動産購入時の価格と売却時の価格に大きな差があると、譲渡益が大きく算出される可能性が高いです。
譲渡所得税が高くなりそうなケースでは、使える特例や控除がないか事前に調べておくようにしましょう。
相続時の換価分割にて譲渡所得税以外にかかるその他の税金とは?
ここまで換価分割における譲渡所得税を中心にご紹介してきましたが、相続時にはその他にも税金がかかります。
譲渡所得税以外にかかる税金は「印紙税」と「登録免許税」の2つです。
それぞれがどのような税金なのかを解説します。
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書に貼る収入印紙のことです。
税率は不動産の売却価格によって異なります。
令和6年3月31日までの間に作成された契約書であれば税率の軽減が受けられるため、以下を参考になさってください。
●500万円を超える~1千万円以下:(本則税率)1万円・(軽減税率)5,000円
●1千万円を超える~5千万円以下:(本則税率)2万円・(軽減税率)1万円
●5千万円を超える~1億円以下:(本則税率)6万円・(軽減税率)3万円
たとえば、4,000万円の不動産を売却した場合、令和6年3月31日までであれば1万円の収入印紙が必要です。
収入印紙は郵便局や法務局、コンビニなどで購入できます。
登録免許税
登録免許税とは、相続登記をおこなう際に必要な税金です。
登録免許税の税率は相続・売買・その他で変動します。
相続登記の場合「不動産の価格×税率0.4%」で求められ、算出した金額の100円未満は切り捨てます。
ここでいう不動産の価格とは、固定資産税評価額のことです。
売却価格が7,000万円だったとしても、固定資産税評価額も同じとは限らないため注意しましょう。
固定資産税評価額は「固定資産評価証明書」に記載されており、お住まいの市町村役場(東京23区は都税事務所)で取得できます。
また、固定資産税評価額を計算式に当てはめる際、1,000円未満は切り捨てることを覚えておきましょう。
たとえば、固定資産税評価額が230万8,123円の場合、1,000円未満切り捨てで230万8,000円として計算します。
まとめ
換価分割とは、相続した遺産を売却して現金に換えたあと、相続人全員で分け合う遺産の分割方法です。
平等に遺産の分配ができるというメリットがある一方、売却に反対する方がいれば手続きが進められないというデメリットもあります。
また、換価分割をおこなう際は、譲渡所得税が高額になるケースに注意しましょう。
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